小森紀綱さんの個展「生への誄詞」に寄稿したテキストです 絵画鑑賞 布施琳太郎 機能や目的を持ったものが、それらすべての機能や目的を失って眼前に置かれている。これはなんなのだろう? 白い壁に、四角い板が引っかかっていた。表面にはさまざまな透明度の塗膜が重ねられており、不透明なザラザラの上に、粒子が、攪拌された水溜りのなかを漂う土埃のような粒子が見える。少し離れて見てみると、その板は小さな窓越しの景色のように感じられた。これは絵画です、と隣の青年が言う。しかしこの板が絵画なら、この板の上で四角く区切られた部分は? それも絵画なんですよ。なにを言っているのか分からない。じゃあ、この内側のクネクネとした線はなんです? それは陰影ですね。陰影? はい。
絵画鑑賞
絵画鑑賞
絵画鑑賞
小森紀綱さんの個展「生への誄詞」に寄稿したテキストです 絵画鑑賞 布施琳太郎 機能や目的を持ったものが、それらすべての機能や目的を失って眼前に置かれている。これはなんなのだろう? 白い壁に、四角い板が引っかかっていた。表面にはさまざまな透明度の塗膜が重ねられており、不透明なザラザラの上に、粒子が、攪拌された水溜りのなかを漂う土埃のような粒子が見える。少し離れて見てみると、その板は小さな窓越しの景色のように感じられた。これは絵画です、と隣の青年が言う。しかしこの板が絵画なら、この板の上で四角く区切られた部分は? それも絵画なんですよ。なにを言っているのか分からない。じゃあ、この内側のクネクネとした線はなんです? それは陰影ですね。陰影? はい。